ハーモニー・コリンの『ビーチ・バム まじめに不真面目』が本日(5月20日)で都内上映打ち切りということをTwitterで知り、急遽予定を変更して立川まで行ってきた。予想以上に下品であけすけ描写が多かったけど、全体的に抑えた演出でハーモニー・コリンは本当に巨匠になったんだ…と同世代の者としては感慨深かった。
主人公のムーンドッグはずっと遊んでいるけど全く遊んでいるように見えない。ここまで徹底して遊ぶというのは楽しいはずはなく、むしろ大変だと思うし、仕事(詩作)をめちゃくちゃしている。遊んでいるのか仕事をしているのか分からない。ここまでいくと人間を超えた存在なので善悪の区別も彼には適用されない。感情にも比較的しばられない、そういう意味で自由だ。マリファナを吸ったりずっとビールを飲んだりすることが自由かというとそうではない。
ストーリーはシンプルでどんでん返しとか全くないが、こういう内容を描く場合はむしろこれでいいのだ。骨太のプロットに魅力的な役者。放火犯や偽船長の描写も衣装やメイク含めて絶妙なおかしみと神聖さ、そしてさりげなさがある。(ザック・エフロンの出演部分は豪華だ!)前作の『スプリング・ブレーカーズ』は正直どう受け止めて良いのか分からなかったけど、今作とポジ・ネガ的な繋がりを感じた。
マシュー・マコノヒーは出演作品数も多く全く別人の役が多いのでもっともっと見たくなるという中毒性がある。案の定マコノヒーがもっと見たくて帰宅後に『マッド』『リンカーン弁護士』を見る。私も仕事をしなければならないんだけど…
作品中で二度繰り返される「夜中にトイレに経って下を見下ろすと、、、」の詩はピストル自殺をしたリチャード・ブローディガンの『ビューティフルな詩』
ブローディガンがマコノヒーのムーンドッグに転生したかのような幸福感と訳のわからなさが混在していて素敵だった。あらゆる姿勢でタイプライターを打つムーンドッグの勇姿が瞼に焼きついていつまでも感動させられる。