2025年4月13日(日) ものを作るよろこび

小学校低学年の頃、近所にトモくんという子が住んでいてよく遊びに行っていた。

その子のうちは白い綺麗な一軒家で、いつも近所の子がたくさん集まる場所だった。

トモくんのお母さんは趣味の人で、手芸が得意。

私の描いた一筆書きの絵を見て、いいわねと、すぐにミシンに向かい、それを型紙として人形に仕立ててくれるような器用な人だった。

また、藤でかごを編むのも得意で、子どもたちにもそれをやらせてくれるのだった。

 藤を柔らかくするために水につけておく深めのケース。湿って曲げやすくなった藤の感触。編みはじめの十字に組み合わされた数本の束。

その素材はいろんな方向に飛び出し、かごのかたちに収まるまで、暴れに暴れ、そしてものすごく場所を取る。

それらの光景が織り重なり、ものができることの基本的な仕組みを理解した。それは果たして楽しくやりがいのあることだった。小さい頃に、どんなものでも「作った。」という経験はとてつもなく大きいものだ。

多分、トモくんはみんなと違う学級にいたのだが、子どもはそんなことはわからない。私にとって、おばさんは真剣に子どもの遊びに付き合ってくれる特別な人だったのだ。

※写真は世田谷美術館コレクション選「緑の惑星」展

投稿者: izumi noguchi

野口泉 オイリュトミスト 武蔵野美術大学映像学科卒。 2002年より舞踏家笠井叡に師事、オイリュトミーを学ぶ。オイリュトミーシューレ天使館第三期及び舞台活動専門クラスを経て、愛知万博「UZUME」(2005)「高橋悠治演奏「フーガの技法とオイリュトミー」(2008、2010)、「ハヤサスラヒメ」(2012)、「蝶たちのコロナ」(2013、2014)、「毒と劔」(2015) など様々な公演に出演。放射能からいのちを守る山梨ネットワークいのち・むすびばとの共同公演「アシタノクニ」や、仙台・月のピトゥリとの人形劇(正確には”にんぎゃうじゃうるり”)「きつねおくさまの!ごけっこん」(2014)、シュタイナー農法研究会(「種まきカレンダーを読み解く」2014)などを開催。近年はシュタイナー系の幼稚園で幼児教育に関わる。また各地でオイリュトミーワークショップを行う。オイリュトミーに関わるイベントを企画する「レムニスカート」を主宰。