小学校低学年の頃、近所にトモくんという子が住んでいてよく遊びに行っていた。
その子のうちは白い綺麗な一軒家で、いつも近所の子がたくさん集まる場所だった。
トモくんのお母さんは趣味の人で、手芸が得意。
私の描いた一筆書きの絵を見て、いいわねと、すぐにミシンに向かい、それを型紙として人形に仕立ててくれるような器用な人だった。
また、藤でかごを編むのも得意で、子どもたちにもそれをやらせてくれるのだった。
藤を柔らかくするために水につけておく深めのケース。湿って曲げやすくなった藤の感触。編みはじめの十字に組み合わされた数本の束。
その素材はいろんな方向に飛び出し、かごのかたちに収まるまで、暴れに暴れ、そしてものすごく場所を取る。
それらの光景が織り重なり、ものができることの基本的な仕組みを理解した。それは果たして楽しくやりがいのあることだった。小さい頃に、どんなものでも「作った。」という経験はとてつもなく大きいものだ。
多分、トモくんはみんなと違う学級にいたのだが、子どもはそんなことはわからない。私にとって、おばさんは真剣に子どもの遊びに付き合ってくれる特別な人だったのだ。
※写真は世田谷美術館コレクション選「緑の惑星」展