2019年2月

 現世の劇を成功させる秘訣は、すべての物の釣合いを保ち、自己の位置を失わずして他に譲ることです。自分の役柄を立派に演ずるためには、その劇の全体を知らなければなりません。個人という概念の中で、全体という概念はけっして見失われてはならないのです。

これを荘子は、得意の「無」の比喩をもって説明しています。ただ「無」にのみ実在の真に肝要なものがある、と荘子は主張しました。たとえば、部屋の実在は、屋根と壁に囲まれた空間にあるのであり、屋根や壁自体ではないのです。水指の役に立つところは、水の入る空間にあり、水指の形とか、それを作っている材料にあるのではありません。「無」はすべてを包むがゆえに万能です。無にあってのみ、運動が可能になるのです。己を虚しくして、そこに他が自由に入りこめるようにできる人は、どんな場合においても、自由な支配者でいられる-全体は常に部分を支配できるのです。

岡倉天心 『茶の本』ソーントン不破直子訳 春風社

こちらの言葉、オイリュトミー群舞稽古の極意ではないでしょうか?! オイリュトミーで沢山の人たちと一緒に群舞を作り上げていく作業は自分を知る絶好の機会。毎日のお稽古に参加させていいただくことはとてもありがたいことだなと最近特に思います。

投稿者: izumi noguchi

野口泉 オイリュトミスト 武蔵野美術大学映像学科卒。 2002年より舞踏家笠井叡に師事、オイリュトミーを学ぶ。オイリュトミーシューレ天使館第三期及び舞台活動専門クラスを経て、愛知万博「UZUME」(2005)「高橋悠治演奏「フーガの技法とオイリュトミー」(2008、2010)、「ハヤサスラヒメ」(2012)、「蝶たちのコロナ」(2013、2014)、「毒と劔」(2015) など様々な公演に出演。放射能からいのちを守る山梨ネットワークいのち・むすびばとの共同公演「アシタノクニ」や、仙台・月のピトゥリとの人形劇(正確には”にんぎゃうじゃうるり”)「きつねおくさまの!ごけっこん」(2014)、シュタイナー農法研究会(「種まきカレンダーを読み解く」2014)などを開催。近年はシュタイナー系の幼稚園で幼児教育に関わる。また各地でオイリュトミーワークショップを行う。オイリュトミーに関わるイベントを企画する「レムニスカート」を主宰。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

このサイトはスパムを低減するために Akismet を使っています。コメントデータの処理方法の詳細はこちらをご覧ください