二作品とも人間の身体に対して別の存在を設定して、そこから人間というあり方を問い直すような作品だった。一つは棒という物質。一つは苔世界という概念。
また一部同じ舞台装置を使っていることもあり、同じコンセプトを全く違ったかたちで表しているようにも見えた。
踊ることが、自己のうちの感情を表現する自己表現ではなく、異なったフェーズから人間を照らし出す一つの方法となっているところがすごく今っぽい感じがした。
『never thought it would』では、衣装が無機的に統一されている中、ダンサーの頭部にとても強く観客の視線を集中させる演出があった。舞台装置の棒状の木材(=首から下の身体)と、有機的で個性に溢れたダンサー三名の頭部の対比に、どうしようもなく断頭をイメージさせられた。
木材にとっての頭部は、それを操作する人の意識であるとすると、こちらははじめから断頭された存在であるとも言える。
純白の衣装が点滅するライトで、正反対の黒性を帯びるようすも、ISILの動画を想起させた。人間にとって頭部とはなにかを考えさせられた。
『幽霊、他の、あるいは、あなた』は、はじめから最後までとても有機的で、しぐさのひとつひとつが慈愛に満ちた印象でずっと見ていたが、いつのまにかパフォーマンスが終わっていてあまり記憶がない。カーテンコールを見ながら、なにか素晴らしいものが地続きで自分の足もとまで降りてきたような。終演後もっとぼーっと空を見つめていたかったが、緊急事態宣言下なこともあり、そうもしていられない。
帰り道、野毛ホルモン通りの喧騒を体感したくて行ってみるも、やはり二十時で全て閉店していて寂しい限り。空中で何かが試運転中でした。