ムーンライト ロケーションがすごい

ムーンライト

とにかくロケーションだけでも見る価値がある

一番初めのシーンで緊迫感がすごい。なんとも言えない、悲しい、荒廃した、しかし神々しい風景が一気にこの映画にのめり込ませる。また前半の子供が隠れる中途半端な廃墟の部屋のリアリティもすごい。

監督のバリー・ジェンキンスと原作のタレル・アルヴィン・マクレイニーが幼少時代を過ごしたマイアミの貧困地区リバティースクエアで撮影されている。

光と緑溢れるマイアミを舞台に、居場所を求める孤独な少年の成長を描く『ムーンライト』の世界│NYタイムズ動画+記事

  作られた空間ではないリアリティ、空気が濃いのに通り感、抜け感があり、誰かの大事なプライベートな空間であることが伝わって来る。

主人公の成長に合わせて3部構成となっていう今作だが、最初の幼児期が最もリアリズムに支配された心に刺さりまくる描写が多く、成長につれてファンタジーの度合いが強烈に濃くなる。後半の展開についていけない人はついていけないかもしれない。

しかしこの映画にはこの構成が最高に生きている。なぜなら前半の子供時代があまりにもつらいからだ。

 ロケーションの素晴らしさとこの構成の妙が故に大好きな映画だ。一生に一度見れば何かが変わる映画。しょっちゅう見れるものではない。一人の夜に号泣できる環境を作ってから見てほしい!!

ポイント

・なんども言うけどロケーションがすごい

リアリティとファンタジーの綴れ織りのセンスがすごい

美味しそうなものが出てきます。

色へのこだわりがすごい 詳しくは→ 町山智浩 映画『ムーンライト』を語る

監督:バリー・ジェンキンス 脚本:バリー・ジェンキンス 原作/原案:タレル・アルヴィン・マクレイニー 2016年アメリカ映画 出演:トレヴァンテ・ローズ アンドレ・ホランド ジャネール・モネイ アシュトン・サンダーズ ナオミ・ハリス マハーシャラ・アリ 他

2019年2月

 現世の劇を成功させる秘訣は、すべての物の釣合いを保ち、自己の位置を失わずして他に譲ることです。自分の役柄を立派に演ずるためには、その劇の全体を知らなければなりません。個人という概念の中で、全体という概念はけっして見失われてはならないのです。

これを荘子は、得意の「無」の比喩をもって説明しています。ただ「無」にのみ実在の真に肝要なものがある、と荘子は主張しました。たとえば、部屋の実在は、屋根と壁に囲まれた空間にあるのであり、屋根や壁自体ではないのです。水指の役に立つところは、水の入る空間にあり、水指の形とか、それを作っている材料にあるのではありません。「無」はすべてを包むがゆえに万能です。無にあってのみ、運動が可能になるのです。己を虚しくして、そこに他が自由に入りこめるようにできる人は、どんな場合においても、自由な支配者でいられる-全体は常に部分を支配できるのです。

岡倉天心 『茶の本』ソーントン不破直子訳 春風社

こちらの言葉、オイリュトミー群舞稽古の極意ではないでしょうか?! オイリュトミーで沢山の人たちと一緒に群舞を作り上げていく作業は自分を知る絶好の機会。毎日のお稽古に参加させていいただくことはとてもありがたいことだなと最近特に思います。