午前3時、眠れなくてもう起きてるしかないと決意して、なるべくどうでも良さそうな映画を選んで「アメリカン・スリープオーバー」を見始めたら思いのほか感動してさらに眠れなくなったので報告しますね。
スリープオーバーすなわち「お泊まり会」
アメリカでは高校生が折に触れて「お泊まり会」というのをやるらしい。
卒業してこれから新しい環境での生活が始まるタイミングや、入学前の不安でドキドキワクワクな時期に親睦をかねて誰かの家(必然的に豪邸とかある程度広い家ですね)に集団でお泊まりするのである。
こと細かに描かれる青春の気まずさ
この映画ではそんな一夜が開けるまでの複数の男女のそれぞれの物語が描かれている。自分の枕や寝袋を持って続々とお泊まり会場に集まってくる高校生たち。
慣れないピッチでお酒を飲んで吐いたり、大麻を吸ったり湖水で泳いで語らったり。女の子同士の噂話や、肝試しからのカップル誕生、成就することのない恋、魅惑的だが同時に逃げ出したくなるようなアンビバレンスな場面の数々が繊細に描かれます。
少しばかり出てくる大人達はぼんやりした存在であり、「夢の番人」さながら居眠りしている。少年少女たちと大人の中間としての存在である「お姉さん」の描かれ方も興味深い。
音楽も青春映画にぴったりの切なく儚い美しいメロディの曲がたくさんで楽しめる。最近聴いてキレイな声だなと思っていたBeirut。このボーカルの人のへろへろした声が好き。
目は光の器官
親密な会話やほんの少しの間。誰にでもある、しかし誰とも共有できないパーソナルな空気感が余すところなくとらえられている。また交錯する視線のビームが綾なす瞳の映画でもある。ヒトの目が光の器官であることをあらためて思い出させられた。映画は光の芸術ですね。
大海の前で泳ぎを覚える小魚のような、危なっかしくも神々しい若者の姿が眩しすぎて直視できない奇跡の青春映画です。
監督はデヴィッド・ロバート・ミッチェル。1974年生まれ。出演の俳優陣はほとんど経歴がありません。どうやってキャスティングされたのかも気になるところ。
ポイント
- 伏線のエピソードが全て収束するアルトマン系の爽快感
- 水関連の描写が印象的
- 眠れない夜にぴったり!
『アメリカン・スリープオーバー』 2010年アメリカ映画 (原題 The Myth of the American Sleepover ) 監督 デヴィッド・ロバート・ミッチェル 出演 クレア・スロマ、マーロン・モートン、アマンダ・バウアー、ブレット・ジェイコブセン、ジェイド・ラムジー 他